2026年、大手コンサルティングファームで数千人規模の人員削減が相次いで報じられています。一方で同じ時期、BCGは2025年通期の売上高144億ドルのうち40%超がAI・テック関連サービスによるもので、その関連サービスが前年比25%成長したと公式発表しました。同じ「AI」というキーワードが、一方では人員削減の理由として語られ、もう一方では過去最大級の成長の理由としても語られている——この矛盾した現象こそが、今のコンサルティング業界の実態です。AIによってコンサルタントは本当に用無しになるのか、そして今のコンサルタントはどうあるべきかを整理します。
何が起きているのか——「人員削減」と「成長」が同時進行する業界
大手ファームの人員削減報道
2026年に入り、McKinseyが数千人規模の人員削減を計画しているという報道が複数のメディアで伝えられています。報道によれば、対象は主にバックオフィス業務・ジュニアのリサーチ職・AIツールによって作業時間が圧縮された実務領域とされています。これらの報道は主に二次情報源に基づくものであり、McKinsey自身が削減人数や対象部門を包括的に公式発表した一次資料は、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。IE Business SchoolのInnovation学教授であるエンリケ・ダンス氏は、報道の中で「AIは、これまで数十年間コンサルティング企業を『知識の特権的な仲介者』として正当化してきた技術的専門性と洞察力を代替しつつある」とコメントしています。Bain・BCG・Deloitteについても、2026年に人員調整や採用鈍化があったとする報道が見られます。
BCGはAI・テックサービスで過去最大の成長を記録
一方でBCGは2026年4月23日、公式プレスリリースで2025年通期の売上高が144億ドル(前年比7%増)に達し、22年連続の増収を達成したと発表しました。この発表の中で、AI・テック関連サービスが総売上の40%を超え、AI関連サービスの成長率が前年比25%だったと明記されています。これはAI関連業務が売上の25%を占めるという意味ではなく、AI・テック関連サービス全体(売上の40%超を占める)の伸び率が25%だったという内容です。BCGは同時に従業員数を33,500人に拡大し、AIエンジニア・データサイエンティストなどの専門人材を積極的に採用したことも公表しています。BCGのCEOであるクリストフ・シュヴァイツァー氏は「AIはあらゆる提供サービス・クライアント関係・日々のケースチームの経験に織り込まれている」と述べています。
削られているのは「誰の仕事」か
両者を並べると見えてくるのは、報道されている人員削減の対象と、BCGが成長領域として公表している業務が、性質の異なるものだという点です。ForresterのAIと専門サービスに関する調査では、AIツールを活用しているコンサルティング企業で生産性向上が報告されているとされています(具体的な数値は調査機関・条件によって異なるため、個別の一次資料の確認が必要です)。この生産性向上分は、これまでジュニアコンサルタントが担っていた調査・分析・資料作成の工数を圧縮する方向に働きやすいとされています。つまり「調べてまとめる」という初級レベルの業務は代替が進みやすい一方、「AI導入をどう設計し、どう組織に根付かせるか」という高度な判断業務は、BCGの発表が示すようにむしろ需要が拡大しているという構図が見えてきます。
新卒・若手コンサルタントを直撃する構造変化
この変化を最も直接的に受けているのが、これからコンサルティング業界を目指す新卒・若手層です。
「アナリストとして必要とされるか分からない」という声
米国では、トップクラスの大学でコンサルティング業界を志望していた学生が、進路を変更する事例が報じられています。ある学生は「自分が組織にとって不可欠な存在になれるかどうかが、もはや明確ではない」と述べ、コンサルティング業界ではなく金融や政府機関への就職を選んだと報じられています。これは象徴的な事例のひとつであり、業界全体の傾向を断定するものではありませんが、若手層の危機感を示す事例として注目されています。
採用基準そのものが変化している
McKinsey・BCG・Bainなどの大手ファームは、エントリーレベルの採用選考自体にAIスキルを組み込み始めているとされています。BCGは公式発表の中で、AI・テック領域の専門人材(AIエンジニア・データサイエンティスト・ITアーキテクトなど)を積極的に採用していることを明らかにしています。従来型の「なんでもできるジェネラリスト」としてのアナリスト採用枠は、相対的に狭まりつつある可能性があります。
報酬体系そのものが変わり始めている
Business Insider Japanの報道によれば、BCGのCEOであるクリストフ・シュヴァイツァー氏は2026年5月、Wall Street Journalの取材に対し、同社が手がける最大規模のAI案件の4分の3が現在、変動報酬制(成果指標への連動や利益分配など、稼働時間ではなく成果に応じて報酬を受け取る仕組み)のもとで運営されていると語っています。BCGからアクセンチュアに至るまで、複数のコンサルティング企業が固定料金・時間単価ではなく成果連動型の報酬体系へと移行しつつあると報じられています。この変化の背景には、AIによって少人数・短期間でプロジェクトを完遂できるようになったことで、クライアントが価格の引き下げを期待するようになり、従来の時間単価モデルでは収益が圧迫されるという構造があります。
今、コンサルタントはどうあるべきか——4つの生存戦略
ここまでの構造を踏まえると、個人レベルで取るべき方向性が見えてきます。BCGが採用している「10-20-70」というアプローチ(アルゴリズムに10%、テクノロジー・データに20%、人材・プロセスに70%を配分する考え方)が示すように、AI導入において最終的に成果を左右するのは人間の判断力である、という視点が土台になります。
①「調べてまとめる人」から「AI導入を設計する人」へ移行する
調査・分析・資料作成という業務は、AIによる代替が最も進みやすい領域です。これらの業務を主軸にしたキャリアは、今後さらに厳しくなる可能性があります。一方で「クライアントの業務にAIをどう組み込むか」「どの業務プロセスから着手すべきか」を設計・提案できる人材への需要は増えています。自分の業務内容が「AIに代替されやすい調査型」なのか「AIを活用した設計・提案型」なのかを見極め、後者に軸足を移すことが最初のステップです。
②特定業界・特定業務への深い専門性を持つ
AI戦略コンサルティングの実務家による分析では、2026年時点で評価されやすい人材の条件として「1つの業界(ヘルスケア・金融サービス・製造業など)に深く精通し、クライアントの課題をパターン認識できる」ことが挙げられています。汎用的な戦略立案スキルだけでは差別化が難しくなっており、特定領域における実務知識と、その領域でのAI活用事例を語れることが重要性を増しています。
③AIプロジェクトの経済性を理解する
採用面接においても、AIプロジェクトの規模・価格設定・実行順序を判断できるかどうかが評価されるようになっているとされています。技術的な実装スキルだけでなく、「このAI導入プロジェクトにどれくらいのコストと期間がかかり、どう優先順位をつけるべきか」を経済合理性の観点から説明できる能力が、コンサルタントとしての付加価値を左右する要素になっています。
④「人間にしかできない役割」を明確に意識する
BCGのCEOは、AIと戦略的な明確さを組み合わせる判断力・共感力こそが持続的な成果を生むと述べています。クライアントとの信頼関係構築・複雑な利害調整・現場での実行支援など、AIが直接代替しにくい業務に自分の価値を再定義することが、中長期的な生存戦略になります。
コンサルタントはAIとどう向き合うべきか——3つの実践的な姿勢
生存戦略を踏まえた上で、日々の実務の中でAIとどう向き合うかという実践的な視点も整理しておきます。
①AIを「代替されるリスク」ではなく「実務ツール」として使いこなす
BCGは自社の従業員がAIツールを日常的に使用し、約4,000人がAIワークフローの開発・拡張に実際に関わっていることを公表しています。AIを「自分の仕事を奪うもの」として距離を置くのではなく、リサーチ・ドラフト作成・データ整理といった定型業務を任せ、自分は判断・提案・関係構築に時間を再配分するという発想の転換が実務的に有効とされています。
②AIの出力を鵜呑みにせず、専門知識で検証する習慣を持つ
AIが生成した分析・提案をそのままクライアントに提出することは、専門家としての信頼を損なうリスクがあります。AIの出力を自分の専門知識・業界理解で検証し、必要な修正を加えるという「人間による最終確認」の工程を省略しないことが、コンサルタントとしての価値を維持する上で重要です。
③継続的な学習を前提にキャリアを設計する
AI技術の進歩速度を踏まえると、一度身につけたスキルセットで長期間安泰という前提は成り立ちにくくなっています。BCGのような大手ファームが継続的なAIアップスキリング(技能再教育)に力を入れていることからも分かるように、個人レベルでも継続的な学習を前提としたキャリア設計が必要です。特定のツール・技術に依存しすぎず、変化に応じて学び直す姿勢そのものを自分の強みとすることが、長期的な視点では重要になります。
日本のコンサルタントへの示唆——市場は拡大、しかし構造は変わりつつある
ここまでは主に欧米企業の動向を見てきましたが、日本のコンサルティング業界でも同様の構造変化が進んでいます。
市場規模は拡大が続く見通し
IDC Japanの調査によれば、日本国内のコンサルティング市場規模は2024年に前年比10.8%増の7,987億円に達し、2029年には1兆2,832億円まで成長すると予測されています(本記事では東洋経済オンラインの報道で紹介された数値を引用しており、IDC Japanの一次資料は今回確認できていません)。DX(デジタルトランスフォーメーション)需要と人手不足を背景に、市場全体としては引き続き成長基調にあるとされています。ただし、この市場規模の伸びが、AI人材と非AI人材とで需要がどう分かれているかまでは、今回確認した情報からは判断できません。市場が縮小しているわけではないという点は確認できますが、拡大の中身については今後の追加情報を確認する必要があります。
アクセンチュア日本法人トップが語る危機感
2025年12月にアクセンチュア日本法人の社長に就任した濱岡大氏は、東洋経済オンラインの取材に対し、AI活用を強力に推進する背景について「単なる危機感というよりも、顧客の求めるサービスやコンサルティングのあり方が根本的に変わる中で、自らが率先して進化しなければならないという強い使命感がある」と述べています。同記事では、同社がグローバルで幹部昇進の判断材料にAIツールの使用状況を用いていると紹介されており、AI活用の度合いを人事評価に組み込む取り組みを進めているとされています(この点はアクセンチュアの公式発表そのものではなく、東洋経済オンラインの取材記事内での紹介である点に留意してください)。また濱岡氏は、日本経済新聞の取材に対し、AIによる「コンサル不要論」が広がる中でも、エントリーレベルの採用を増やし人材投資を継続する方針を示しています。
「人月モデル」への構造的な疑問
東洋経済オンラインの報道では、アクセンチュア日本法人トップが、AI時代において従来型の人月モデル(稼働時間に応じて報酬を得る仕組み)について問題提起する趣旨の発言をしたと紹介されています。ただし発言の詳細な文脈や「矛盾」という表現の正確な使われ方までは、有料会員限定記事のため今回確認できていません。趣旨としては、AIによって少人数・短時間で成果を出せるようになるほど、稼働時間に基づく請求モデルとクライアントが期待する価値のズレが大きくなりうる、という問題意識だと考えられます。この点は前述した欧米の成果連動型報酬への移行とも共通する問題意識です。
日本のコンサルタントが意識すべき点
日本市場特有の事情として、以下の点が今後の判断材料になります。
- 市場拡大と人員需要のミスマッチが起きうる:市場規模が拡大していても、それがそのまま人員増を意味するとは限りません。AI活用度が採用・評価基準に組み込まれつつある中、同じ会社規模でも「AIを使いこなせる人材」への需要はより顕著になっていく可能性があります
- 人月モデルからの転換は日本でも進みうる:欧米の大手ファームで成果連動型の報酬体系への移行が進んでいることを踏まえると、日本国内でも同様の動きが徐々に広がる可能性があります。稼働時間の切り売りではなく、成果を定義し提示できる能力が今後より重要になります
- 大手ファームの動向は業界全体の先行指標になりやすい:アクセンチュア・デロイト・BCGなど外資系大手ファームの日本法人での取り組みは、国内コンサルティング業界全体の動向を先取りする傾向があります。これらの企業がAIをどう位置づけているかを継続的に確認することが、自身のキャリア判断の参考になります
この構造変化が当てはまりにくいケースと注意点
- すべてのコンサルティング業務が一律に代替されると考えるケース:報道されている人員削減は主にジュニアのリサーチ・バックオフィス業務が中心とされており、高度な戦略立案・関係構築を伴う業務は依然として人間が担っています。「コンサル業界全体が消える」という単純化は実態と異なります
- 個人の独立系コンサルタント・フリーランスにそのまま当てはめるケース:今回の分析は主に大手戦略ファーム(MBB・Big4)の動向です。独立系・フリーランスのコンサルタントは組織構造が異なり、影響の受け方も一様ではありません。自分の業務形態に即して個別に判断する必要があります
- AI関連スキルだけを身につければ安泰と考えるケース:AI戦略・MLOpsなどの技術的知見は重要ですが、それだけでは不十分です。特定業界への深い理解、クライアントとの関係構築力といった従来型のコンサルティングスキルと組み合わせることが引き続き重要とされています
- 報道ベースの数字をそのまま一次情報として扱うケース:人員削減に関する報道の多くは複数のメディアによる伝聞情報であり、企業の公式発表そのものではない場合があります。BCGの「AI関連売上25%」のように、報道の見出しと公式発表の実際の内容が異なるケースもあるため、重要な判断をする際は一次資料(公式プレスリリースなど)を確認する姿勢が必要です
よくある質問
Q1. コンサルタントという職業自体がなくなる可能性はありますか?
職業そのものが消滅する可能性は低いと考えられますが、業務内容の重心が大きく変わりつつあります。調査・分析・資料作成といった定型業務は代替が進む一方、AI導入の設計・組織変革の伴走・複雑な利害調整といった業務は引き続き人間が担う領域として残るとされています。「コンサルタント」という職業の中身が再定義されている段階と捉えるのが実態に近いです。
Q2. 新卒でコンサルティング業界を目指すのはリスクが高いですか?
一律にリスクが高いとは言えませんが、従来型のジェネラリスト・アナリスト採用枠が相対的に狭まっている可能性があります。AI戦略・データ分析・生成AI実装などの専門スキルを在学中から身につけておくことが、採用選考において有利に働く傾向が指摘されています。志望する場合は、自分がどの領域で専門性を積むかを早い段階から意識することが現実的な対策です。
Q3. 今すでにコンサルタントとして働いている場合、何を優先して学ぶべきですか?
自分が担当している業務が「調査・分析中心」か「戦略設計・クライアント折衝中心」かを棚卸しすることが出発点です。前者の比重が高い場合、AI導入の設計・実装を提案できる知見を意識的に身につけることが必要です。後者の比重が高い場合は、既存の強みを維持しつつ、AIプロジェクトの経済性(コスト・期間・優先順位)を判断できる知識を補うことが有効とされています。
Q4. 独立系・フリーランスのコンサルタントもこの影響を受けますか?
大手戦略ファームとは異なる形で影響を受ける可能性があります。独立系コンサルタントは、大手ファームが対応しにくい中小規模の案件や、特定領域に特化した業務を担うケースが多く、必ずしも同じ構造で代替されるわけではありません。ただし、クライアント側がAIツールを直接活用して簡易な分析を自前で行うケースが増えれば、独立系コンサルタントにとっても提供価値の再定義が必要になる可能性があります。
Q5. AIをコンサルティング業務に取り入れる際、最初に何から始めればいいですか?
まずは自分が日常的に行っている業務の中で、リサーチ・データ整理・ドラフト作成など定型的な作業をAIに任せられないか洗い出すことが現実的な出発点です。その上で、AIが生成した内容を鵜呑みにせず、自分の専門知識で検証・修正する工程を必ず組み込むことが重要です。BCGのような大手ファームも、AIと人間の判断を組み合わせることを重視しており、AIに任せる範囲と人間が担う範囲を意識的に線引きする習慣が実務的な出発点になります。
Q6. 日本のコンサルティング業界特有の課題はありますか?
市場全体は成長基調にある一方、従来の人月モデル(稼働時間に応じた報酬体系)のあり方について問題提起する声が業界内で出始めている点が、日本市場特有の論点として浮上しています。アクセンチュア日本法人のトップも、この人月モデルとAI時代のクライアント期待とのズレについて言及したと報じられています。日本国内でコンサルタントとして働く場合、稼働時間の切り売りではなく成果を定義し提示できる能力を磨くことが、今後より重要になる可能性があります。
参照すべき公式情報
- Boston Consulting Group公式プレスリリース(2025年通期業績発表)
- Business Insider Japan(BCG・アクセンチュアの成果連動型報酬に関する報道)
まとめ
- 2026年、大手コンサルティングファームの人員削減が報じられる一方、BCGは公式発表で売上の40%超がAI・テック関連サービスで、その成長率が前年比25%だったと公表。同じAIが「人員削減の理由」と「成長エンジン」の両方として語られているのが実態です
- 報道されている削減は主にジュニアのリサーチ・バックオフィス業務であり、AI導入の設計・組織変革支援といった高度な業務はむしろ需要が拡大している
- 新卒・若手層の採用基準にもAIスキルが組み込まれつつあり、従来型のジェネラリスト採用枠は相対的に狭まっている
- 生存戦略は「調べる人からAI導入を設計する人へ」「特定業界への専門性」「AIプロジェクトの経済性の理解」「人間にしかできない役割の再定義」の4点に整理できる
- AIとの向き合い方としては、実務ツールとして使いこなす・出力を鵜呑みにせず検証する・継続的な学習を前提にする、という3つの姿勢が実践的です
- 報道ベースの数字と企業の公式発表は必ずしも一致しないため、重要な判断の際は一次資料を確認する姿勢が重要です
- 日本市場もコンサルティング市場全体は拡大が続く見通しだが、人月モデルのあり方への問題提起が始まっており、AI活用度が採用・評価基準に組み込まれつつある点は欧米と共通する動きです。BCG・アクセンチュアなど大手ファームでは成果連動型の報酬体系への移行も進んでいると報じられています
次のステップ
- 自分が担当している業務を「調査・分析中心」か「戦略設計・関係構築中心」かに分類し、前者の比重が高い場合はAI導入設計への軸足移行を検討する
- 特定業界・特定業務への専門性を1つ選び、その領域でのAI活用事例を語れるように準備する
- 日常業務の中でAIに任せられる定型作業を洗い出し、AIの出力を検証する工程を組み込む習慣をつける
- 自分が所属する(または志望する)ファームが、AI活用度を評価・昇進基準にどう組み込んでいるかを確認し、人月モデルからの転換に向けた準備状況を把握する
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