
新興国株インデックスは、全世界株や米国株と比較して値動きが大きく、ポートフォリオに組み込むかどうかで判断が分かれる資産クラスです。新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠のどちらでも購入できる商品がありますが、成長期待の高さと同時に、政治・為替・規制といった特有のリスクを抱えている点は見落とされがちです。
この記事では、新興国株インデックスの仕組みを整理したうえで、成長期待の根拠、地政学的リスクの具体例、組み込むかどうかを判断する4つの基準を順に確認していきます。
(筆者注:私自身も新NISAでインデックスファンドの積立投資を実践しており、この記事はその経験をもとに執筆しています。)
新興国株インデックスとは何か
新興国株インデックスは、経済成長の途上にある国々の株式市場をまとめて対象とする指数に連動する運用手法です。まず対象範囲と、先進国株・全世界株との違いを整理します。
対象となる国と指数の仕組み
代表的な新興国株インデックスには、中国・インド・台湾・韓国・ブラジルなどの国々が組み入れられています。どの国をどの比率で含むかは指数を算出する機関の基準によって決まり、指数会社の定期的な見直しによって構成銘柄や比率が変動する点は押さえておく必要があります。
先進国株・全世界株との違い
先進国株インデックスが米国・欧州・日本などの成熟した市場を対象にするのに対し、新興国株インデックスは経済成長率が相対的に高い一方で、市場の流動性や情報開示の水準が先進国ほど整っていない国を多く含みます。全世界株インデックスの多くは、すでに新興国株を一定比率で組み込んだ設計になっているため、新興国株インデックスを別途追加すると、結果として新興国への配分が重複する場合があります。
新興国株に期待される成長期待の根拠
新興国株が注目される背景には、人口動態と経済成長率の関係があります。ただし、成長期待の数字を見る際には前提条件の確認が欠かせません。
人口動態と経済成長率の関係
国際機関の統計によると、新興国の多くは先進国と比較して生産年齢人口の比率が高く、中長期的な経済成長を支える要因になり得るとされています。ただし、人口動態は成長を支える一つの要因に過ぎず、政策運営や産業構造の変化によって実際の成長率は大きく変わる場合があります。
新興国株が全世界株指数に占める比率
執筆時点では、全世界株インデックスに占める新興国株の比率はおおむね1割前後で推移していますが、この比率は市場の時価総額の変動によって日々変わります。新興国株インデックスを別途追加する場合は、全世界株の中にすでに含まれている比率を踏まえたうえで、上乗せする比率を検討する必要があります。
新興国株特有の地政学的リスクと変動要因
成長期待の裏側には、先進国株にはない特有のリスクが存在します。投資判断の前提として、リスクの中身を具体的に把握しておくことが重要です。
政治・為替・規制リスクの具体例
新興国では、政権交代や外資規制の変更、通貨の急激な下落といった事象が株価に直接影響を与える場合があります。特定の国に対する規制強化や資本移動の制限は、投資家の想定より急に発表されるケースがあり、事前の予測が難しい点がリスクとして指摘されています。
過去の下落局面から見るボラティリティ
新興国株インデックスは、世界的な金融引き締め局面や資源価格の急落時に、先進国株よりも大きく値下がりする傾向が過去に見られました。値動きの大きさそのものが悪いわけではありませんが、短期的な下落に動揺しやすい人にとっては、保有比率を抑える方が精神的な負担を減らしやすくなります。
新興国株インデックスを組み込む4つの判断基準
成長期待とリスクを踏まえたうえで、実際に組み込むかどうかを判断する基準を整理します。
リスク許容度と投資期間の確認
以下の手順で、自分の状況を確認することができます。
- 投資に回せる資金のうち、当面使う予定がない期間を確認する
- 過去の下落局面で資産が2〜3割減った場合に、積立を継続できるかを想定する
- 新興国株の比率を上げた場合の想定変動幅を、証券会社のシミュレーターなどで確認する
- 全世界株や先進国株とのバランスを踏まえて、上乗せする比率を決める
投資期間が10年以上確保できる人は、新興国株の変動を許容しやすい傾向がありますが、5年以内に資金を使う予定がある場合は、比率を抑えるか組み込みを見送る選択肢も検討する価値があります。
全世界株との重複を避ける配分の考え方
新興国株インデックスを追加する場合は、保有しているファンドの構成をあらかじめ確認し、重複を避ける工夫が必要です。以下は、代表的な選択肢を比較したものです。
| 選択肢 | 向いている人 | 避けるべき人 |
|---|---|---|
| 全世界株1本のみ | 管理を簡素化したい人、値動きの幅を抑えたい人 | 新興国の成長期待に積極的に賭けたい人 |
| 全世界株+新興国株を上乗せ | 成長期待を重視し、変動幅を許容できる人 | 短期的な下落で不安になりやすい人 |
| 先進国株+新興国株を個別配分 | 配分比率を自分で細かく管理したい人 | 投資の手間をできるだけ減らしたい人 |
例えば月3万円を新興国株インデックスに一定利回りを仮定して積み立てた場合、年率5%(税引き前・一定利回り仮定という参考値)で20年続けると、複利計算式(元利合計=月積立額×{(1+r)^n-1}/r)に基づく概算では約1,233万円になります。ただし、これはあくまで一定の前提を置いた参考値であり、実際の市場では新興国株特有の変動幅により、この数字より大きく上振れ・下振れする可能性があります。正確な見通しは金融機関のシミュレーターで確認することをおすすめします。
新興国株インデックスが向いていない人・注意点
成長期待だけを見て組み込みを決めると、想定外の値動きに直面した際に対応を誤る場合があります。ここでは、この手法が機能しにくいケースを具体的に整理します。
短期的な値動きに耐えられない人
新興国株は、世界的な景気後退や特定国の政策変更によって、短期間で大きく下落する場合があります。値動きを頻繁に確認して一喜一憂しやすい人や、下落局面で積立を止めてしまう傾向がある人は、新興国株の比率を高めることが結果的に負担になるケースがあります。
すでに全世界株1本で十分分散できているケース
全世界株インデックスにはすでに新興国株が一定比率で組み込まれているため、追加で新興国株インデックスを購入すると、意図せず新興国への配分が想定より高くなる場合があります。分散投資の目的をすでに達成できている人にとっては、追加の商品を増やすことがかえって管理を複雑にするだけになるケースもあります。
一方で、新興国の成長性を積極的に取り込みたいという考え方自体は否定されるものではありません。ただし、その場合も「どの比率まで許容できるか」を事前に決めておくことが、感情的な売買を避けるうえで重要です。
新興国株インデックスへの投資を検討する際は、オルカン一本投資は正解?30代会社員が確認する4基準もあわせて確認すると、全世界株との重複を避ける判断がしやすくなります。また、投資信託全般のコスト構造を把握しておくことも欠かせません。【要確認】30代会社員が投資信託の隠れコストを見抜く4視点では、信託報酬以外に確認すべきコストを整理しています。
よくある質問
新興国株インデックスは新NISAのつみたて投資枠で買えますか
金融庁が定めた基準を満たす新興国株インデックスファンドであれば、つみたて投資枠の対象になっている場合があります。ただし対象商品は執筆時点の基準に基づくものであり、変更される可能性があるため、購入前に金融庁の公式サイトで対象商品リストを確認することをおすすめします。
新興国株の比率はポートフォリオ全体の何割が目安ですか
明確な正解はなく、リスク許容度や投資期間によって異なります。全世界株にすでに含まれる新興国株の比率(執筆時点でおおむね1割前後)を踏まえたうえで、追加で上乗せするかどうかを判断基準にすると考えやすくなります。まずは自分の全体配分を確認することが次のステップになります。
新興国株インデックスと個別の新興国株、どちらがリスクは低いですか
一般的にはインデックスの方が個別銘柄よりも分散が効いており、特定企業の業績悪化による影響を受けにくいとされています。ただし、指数全体が対象国の政治・経済情勢に左右される点は変わらないため、リスクがゼロになるわけではありません。次に確認すべきは、対象指数がどの国にどの程度の比率で配分されているかです。
過去に大きく下落した新興国株インデックスは今後も同じリスクがありますか
過去の下落要因(金融引き締め、資源価格の急落など)が今後も繰り返される保証はなく、逆に過去に見られなかった新しいリスクが顕在化する可能性もあります。個人の状況や市場環境によって影響は異なるため、定期的にニュースや運用報告書を確認する習慣を持つことが判断の目安になります。
新興国株インデックスを一度組み込んだら途中で減らしてもよいですか
ポートフォリオの見直し自体は問題ありませんが、短期的な値下がりに反応して頻繁に売買を繰り返すと、手数料や税負担がかさむ場合があります。見直しのタイミングは、当初決めた投資期間やリスク許容度に変化があったかどうかを基準にすると判断しやすくなります。
参照すべき公式情報
- 金融庁
- 日本証券業協会
- 投資信託協会
まとめと次のステップ
新興国株インデックスは成長期待がある一方で、政治・為替・規制といった特有のリスクを抱えた資産クラスです。判断にあたっては、以下の3点を軸に整理することができます。
- 投資期間とリスク許容度を確認し、短期的な下落に耐えられるかを想定する
- すでに保有している全世界株・先進国株ファンドに含まれる新興国株の比率を確認する
- 上乗せする場合は比率の上限をあらかじめ決め、感情的な売買を避ける
まずは自分が保有しているファンドの構成を確認し、新興国株がすでにどの程度含まれているかを把握することから始めると、追加すべきかどうかの判断がしやすくなります。
※本記事の情報は執筆時点のものです。サービス料金・制度の内容は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトをご確認ください。収益・投資の効果は個人の状況によって異なります。本記事の内容は特定の商品・サービスへの加入を推奨するものではありません。



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